毎年夏になると、昔よくクワガタを採りに行っていたメンバー3、4人で集まって、近況報告やバカ話をしながら採集に行くのが恒例行事になっているのですが、近年は開発による棲息地の減少や消滅、さらにはLED化で山間部の街灯回りも出来なくなっており、今年はもうほんとに行く場所がない…と思っていました。
そこで、今年は、23年前の1999年、クワガタ仲間のロウが見つけてきた、ミヤマクワガタが多産する隣の隣の市まで足を伸ばすことにしました。
しかし、前記事にも書いた通り、このポイントはこの1999年こそミヤマの姿がたくさん観られましたが、翌2000年はわずか1頭しか観られず、2001年以降は全くその姿を観ることが出来なくなってしまったポイントです。ノコギリクワガタやヒラタクワガタ、コクワガタは相変わらずいますが、ミヤマだけ、まるで最初からいなかったかのように、パタっといなくなってしまったのです。
クワガタを採りに行く、と言っても、私たちは採集はほとんどしていません。たくさんのミヤマの個体を観た1999年にしても、全員で5、6頭持ち帰ったのみです。当時、他の採集者に出くわす事もありましたが、それでもミヤマだけを採り尽くす事など出来るわけもありません。
ただ、ポイントが平地にあり、体感的には温度や湿度も私が住む愛知県の海側の平野部と同じような高温多湿な感じなので、ミヤマの棲息環境には相応しくないとは感じていました。温暖化が騒がれ出した時でもありますが、しかし、それにしても、わずか1年でこれだけ激減するなんて…。
ミヤマは産卵して次の世代が活動するまでに2、3年掛かると言われます。とすると、1999年にいた大量のミヤマたちの子どもは、2001年、2002年くらいに地上に出てくることになります。十数年おきに大量発生するアメリカの素数ゼミのように、このポイントではミヤマが定期的な大量発生をしているのでは?と思い、2001年、2002年もこのポイントには足繁く通いましたが、結局それ以後もミヤマは1頭も観る事はありませんでした。
しかし、あれから20年が経ち、あのポイントがどうなっているんだろう?と思い、今年の夏の集まりでは、ミヤマ狙いで久しぶりにこの場所に行ってみる事にしました。
ミヤマ自体はここ数年もどこかで観たり捕まえたりしていましたが、オスの姿も観たいし、メスがいれば採集して産卵もさせてみたい。当時よく行っていたポイントは獣害対策の柵が設けられて入れなくなっているので、少し離れた場所を探してみることにしました。
7月のある夜。昼間は猛暑でしたが、ポイントに着いた21時頃には過ごしやすい気温になっていました。
道路から入っていける場所を散策すると、クヌギの木にノコギリがちらほら……ん? いや、あっちにもこっちにも、めっちゃいる…。1本の木に5、6頭のノコギリがついています。ロウと「すげー!」「地元の山じゃこんな光景見れないよな」と興奮しながら語り合います。
とは言え、今回の目的はミヤマなので、ノコギリは採らず場所を少し移動して散策してみると、こちらにもノコギリがうじゃうじゃいます。すごい…。まるで1999年のミヤマ大量発生の時のように、ノコギリがあちこちに大量発生しています。こんな光景は初めてです。コクワやカブトムシも少々います。しかし、ミヤマはいません。木の上の方にいるメスは念のため全てアミで採って確認していきますが、これもノコギリのみ。
よくミヤマとノコギリの棲み分けについて言われるのが、気温の差です。20年前、初めてこの場所に来た時にはミヤマが最優先種で、ノコギリはあまり観られませんでした。それが今は、ノコギリだらけになっている…。ノコギリがこれだけ棲息出来る環境があることは嬉しいですが、温暖化の影響が顕著に現れているようで怖い感じもします。
また、クヌギ以外の木にもノコギリがたくさんついていることに気づき、ロウが葉の形からスマホで調べると、アカメガシワという木でした。こんな木にもクワガタが集まるんですね…。細い枝にもノコギリがあちこちについています。しかし、ミヤマはいない…。
途中、割と太めのクヌギを見つけ、上の方をライトで照らすと、高い位置にメスがいます。ノコギリかミヤマは判別出来ないのでアミを伸ばして捕まえてみると……うっ、ミ、ミヤマだー!! やっと、やっと出会うことが出来ました。この場所では22年ぶりです。
ミヤマのメスは一昨年にも山間部の外灯下で捕まえたことがあり、その時も産卵させようと色々セットを組んだのですが、卵を産ませることが出来ませんでした。未交尾だったのか環境が悪かったせいなのかは分かりませんが、今回こそは産ませたいところです。
辺りを散策し、追加は得られませんでしたが、最後にもう一度メスを捕まえたクヌギを見てみると……いた……ライトに照らされて金色に輝く、ミヤマのオスが、いた…!
まだ細々とではあってもこの地に棲息していたことが嬉しく、ロウと2人で歓喜しました。
…ちなみに、ここまで写真を全く撮っていませんでした(^_^;)
帰宅後に撮った画像です。
メスの追いがけの意味もあり、とりあえずこのオスも持ち帰りました。帰宅後、早速交尾していたので、しばらく様子を見て、後日このオスは元の森にリリースしました。
そして完熟マットでセットを組み、そこにメスを投入して半月ほど経ちましたが、今のところマットの底面などには卵の姿は見られません。果たしてどうなるか…。
ちなみに、オスをリリースしに行った時にこのミヤマを捕まえたポイントをまた散策したのですが、他の採集者も来ており、ミヤマはおろか、あれほどたくさんいたノコギリも2頭しか観られませんでした。自分たちが初めて来た時でも簡単に見つけられたポイントなので、他の採集者も当然来ているだろうとは思っていましたが…。
その後、もう1度このポイントにも行きましたが、ノコギリが数頭観られたのみでした。結構採集者が入っているのかなあ…?
とりあえず、今夏中にあと数回、ここへは通ってみようと思います。